ライブラリー濃度のノーマライゼーションを手動で行う場合のベストプラクティス

08/22/2022


ライブラリーのノーマライゼーションは、体積プーリングの前にさまざまな濃度のライブラリーを希釈し、同一濃度に調製してすべてのサンプルにリードを均等に配分できるようにするプロセスです。ノーマライゼーションのベストプラクティスは、手動ノーマライゼーションを必要とするイルミナ製品を使ったライブラリー調製すべてに使用できます。
ノーマライゼーションの手順:

  1. ライブラリーサイズを決定する
  2. ライブラリーを定量する
  3. 希釈率の計算式を作成する
  4. ノーマライズしたライブラリーをプールする

Nextera™ XTおよびIllumina® DNA Prep、(M) Tagmentation(旧商品名:Nextera DNA Flex)など一部のライブラリー調製キットは、ビーズベースのノーマライゼーション方式を提供​します。 手動によるノーマライゼーションは、ビーズベースのノーマライゼーションでは必要ありません。ただし、Illumina® DNA Prep、(M) Tagmentationを使用する際のインプット量が100 ngより少ない場合、またはNextera XTを使用する際の最終ライブラリー収量(ng)が10~15 nMである場合、内部ノーマライゼーションは適合しません。 こうした状況では、手動によるノーマライゼーションが必要になります

: ビーズノーマライゼーションの化学的性質は、Illumina® DNA Prep、(M) TagmentationとNextera XTのワークフローで異なります。そのため、シーケンス前のライブラリー変性と希釈の手順も異な​ります。 詳細については、イルミナのテクニカルサポート(techsupport@illumina.com)にお問い合わせください。

ライブラリーサイズを決定する

BioanalyzerまたはFragment Analyzerでサンプル解析を行い、ライブラリーのサイズを確認します。またこのステップで、アダプターダイマーや予想外のライブラリーサイズなど、ライブラリーに関する潜在的な問題が明らかになります。

ライブラリーを定量する

ライブラリー定量と品質管理(QC)クイックガイド資料で要約されているライブラリー調製ガイドの推奨定量法を使ってライブラリーを定量します。

BioanalyzerまたはFragment Analyzeから取得した平均ライブラリーサイズと、dsDNAライブラリー濃度の算出時にng/µlからnMに変換する資料を使って、定量値をng/µlからnMに変換します。

希釈率の計算式を作成する

このステップで、濃度のノーマライゼーションが実施されます。希釈は、分子生物学グレードの水または10 mM Tris-HCl pH 8.5を使って行うことができます。ライブラリーが同一または異なる濃度を持つ場合、ライブラリーの希釈率をプーリング計算機で算出することも可能です。

  1. その後のアプリケーションでライブラリーを希釈するための共通濃度を求めます。ほとんどのイルミナシーケンスプラットフォームでは、変性および希釈ガイドラインで望ましいとされる開始濃度は各ライブラリーにつき2~4 nMとされています。詳細は各機器のユーザーガイドを参照してください。
  2. 以下の等式を使って、ライブラリーの希釈率を算出します:
  3. 最も均一なサンプルのシーケンスおよび最も信頼性の高いクラスター密度を得るためには、必ずすべてのピペット容量が少なくとも2 µlであるようにします。2 µl未満のピペットは、大幅な濃度エラーを発生させる恐れがあります。必ず適切な容量を使用できるよう、計算を調製します。高濃度のライブラリーについては、1つ以上の中間濃度を使ってください。

    たとえば、以下の計算は、3つのライブラリー(開始濃度がそれぞれ15 nM、20 nM、および50 nM)を希釈して、各ライブラリーの最終容量が15 µl、最終濃度が4 nMになる方法を示しています。

    開始
    濃度
    ストックDNAの容量
    (濃度4 nM
    の場合)
    希釈剤の容量
    (最終
    容量15 ulの場合)
    15 nM 4 ul 11 ul
    20 nM 3 ul 12 ul
    50 nM* 1.2 ul 13.8 ul

    * 50 nMライブラリー例は、4 nMのライブラリーに希釈するため、1.2 µlのストックDNAのみを使用します。最も正確な結果を得るためには、少なくとも2 µlのピペット容量が得られるよう、20 nMの中間希釈が必要です。

    中間希釈 最終希釈
    開始
    濃度
    ストックDNAの容量
    (中間濃度20 nMの場合)
    希釈剤の容量
    (容量15 ulの場合)
    中間20 nM DNAの容量
    (最終濃度が4 nMの場合)
    希釈剤の容量
    (容量15 ulの場合)
    50 nM 6 ul 9 ul 3 ul 12 ul

     

  4. 上記の計算に従ってライブラリーを希釈します。これでライブラリーがノーマライズされました。

ノーマライズしたライブラリーをプールする

体積プーリング:ノーマライズされた各ライブラリーからそれぞれ同量を取ってマイクロチューブに入れ、ピペットをやさしく10回ほど上下して十分に混ぜます。

これで、ノーマライズされたプールを変性およびシーケンスすることができます。変性の詳しい手順については、各機器の変性および希釈ガイドを参照してください: